大学入学共通テストに意味はあるのか
はい。
「大学入学共通テスト」とかいうのが再来年度の入試からスタートするらしいので、仮にも入試英語を教える機会を持つ僕も試行調査の問題を2年分見てきたのですが…
本当に変えたほうがいいのか?
というのが正直な感想です。以下、2年分の試行調査と現行センターの比較をしながら偏見だらけの私の意見を述べさせていただきます。
1.現行のセンターと何が違う?
まず現行のセンター試験と比較した際の「大学入学共通テスト」(以下新テスト)の変更点は、ざっと目につくだけでも以下の2点があります。
- 「英語(筆記)」が「英語(リーディング)」に変更され、リスニングとの配点比が4:1(200点:50点)から1:1(100点:100点)に変更された。
- 新テストの「英語(リーディング)」には、現行センターの第1問(発音・アクセント)、第2問(文法・語法)に該当する設問、すなわち単純な知識モノはない。
2.難易度はどうか?
新テストの難易度について、私個人としては現行のセンター試験よりやや難しくなっていると考えます。
以下、「リーディング」の問題について考察します。
リーディングは現行のセンター試験以上に読むべき文章の語数が多く、読解体力が試されるという側面がさらに強まったと感じます。
過去2年の試行調査のうち、1年目(2017)は各設問の配点は不明、2年目(2018)は各設問の配点がはっきり示されていました。
2018年版の配点に基づいて2017年の問題にも独自に点数を割り振って予想される 平均点(1) を求めたところ、以下のような結果が得られました。
2017(予想):51.09点
2018(速報):51.25点
ここでより共通テスト実施時の平均点に近づけるために、現段階で誤答した受験生のうち10%が同じ問題に正解することができたと仮定した時の 平均点(2) は以下のようになりました。
2017(予想):55.98点
2018(速報):56.12点
ここで過去5年間(2015-2019)のセンター試験の平均点を見てみると以下のとおりです。
2015:116.17点(58.08%)
2016:112.43点(56.21%)
2017:123.73点(61.86%)
2018:123.75点(61.87%)
2019:123.30点(61.65%)
2015・2016年はやや難しめ、2017~2019年は例年並みいう感じでしたが、平均点は約60%で安定しています。これに比べると過去2回の試行調査はやや難しく、仮に私が試算した平均点(2)が現実的であるとすると2016年並みの難易度、平均点(1)との比較だと過去20年のセンター試験にはなかった難易度だということができます(過去20年のセンター試験で英語の点数が最も低かった2002年度で109.68点=54.84%)。
3.本当によいことか?
では、この共通テスト、本当によいものなのでしょうか。
褒めるべきところをまず褒めます。
リスニングとリーディングの配点比が1:1になった点、これは LRSW の4技能を均等に伸ばそうという指針からブレていないので褒めて良いと思います。
以上です。
ではいただけない点を2つほど。
まず「4技能を伸ばす」というのを目標にして共通テストを作っているにも関わらず、試験そのものが LR しかない。
これはテストの性質上 SW の設問を作りづらいのは理解できますが、現行のセンター試験においては、例えば第1問の発音・アクセントで S の力の一部を見たり第2問Bの整序作文で W の力の基礎を問うたりということができたわけですが今回のテストではそれが全く出来ない。
本当にこれが4技能を謳ってる人間のやり方か?と疑問に思いました。
次にリスニングとリーディングの配点は1:1ですが試験時間は現行のままであるという点です。
つまり 80分 : 30分 で配点はどちらも100点です。
これまでのセンター試験では時間と配点の比がきっちりしており、30分のリスニングは50点、60分で行う試験はすべて100点、80分で行う試験はすべて200点に設定されていました。少し不思議な言い方ですが同じ時間で取れる点数はほぼ同じになるようになっているわけです。しかし今回の試験ではそれが崩れた。
配点の上では均等だった L と R に、分量という点では差がある。それも性質上仕方のないことではありますがちょっと違和感を覚えます。
ということで、このままの形で共通テストを迎えることに関しては弱小なイチ個人として反対しています。だからといって何かが変わるとも思えないわけですが。